後悔するように出来ている、新住人、贅沢な骨

近頃、G氏から借りている「蝉しぐれ」を読みながら通勤している。
その本の一節にこのような言葉があった。

「人間とは後悔するように出来ておる」


なるほど と思った。感嘆した。
自分の行動は常に正しくあって欲しいと思いはするものの、実際に最良になり得ぬことが多く、反省の繰り返しである。その為この言葉に救われるような気持ちさえした。




職場に新しい住人が配属された。
実に久しぶりの住人である。


といっても僕とは異なり、短期的に来るだけの派遣の方ではある。
しかしながら年内いっぱいはいるとのことで、久しぶりの住人に素直に喜ぶ。


お話好きと見える新住人H氏は、年齢不詳の長身の女性である。
不慣れな環境でさぞ不安だろうと思い、こちらから他愛のない話をふったりもした。
他の職場と異なり、陸の孤島のような実験室は、住人が僕だけのため、雰囲気も僕色に染まっている。
つまりは敷地内で最も緩い空間がこの3階のラボである。
「すいませんね ゆるゆるで」と言うと、
「逆に和やかでやりやすいですよ」と返って来た。


業績により身の振り方が変わらない短期派遣の方にとっては、僕みたいな(ゆるゆる)人間が良いのかも知れない。



帰宅後、夕食をとりながら「贅沢な骨」を見る。
娼婦とニートの共同生活に、娼婦の客が絡み始め、それまで保たれていたバランスが崩れていく そんな感じの話だ。
オープニングから生々しいセックスシーンが始まり、飯時にはちょっとな と考える。
娼婦の客役に永瀬正敏が起用されていたが、僕はこの永瀬正敏がとても好きだ。
というよりは永瀬正敏が演じている役が好きである。
作品の方も結構好きな感じでまとまっていた。
僕のお気に入りの感情がところどころに織り込まれている。
焦燥感、無力感、どこにもぶつけようのない憤り
いつもどおり。
このいつもどおりにいつもやられる。